考えるカメの考察日記

自分の考えたことを、気の向くままに書いていきます。

チャットモンチーの歩みから見えてくるもの

こんにちは

みなさんは、チャットモンチーというバンドをご存知でしょうか?

ガールズバンドの歴史を変えたといっても過言ではないロックバンドであり、その影響力は多方面に及んでいます。

今回、この文章で注目したいのは、音楽理論ではなくて、その活動形態についてです。

(音楽談義を期待していた方、ごめんなさい……。)

今はすでに活動を終了してしまっていますが、チャットモンチーの歩んだ道のりというのは、21世紀の今、これからの生き方を考える上での示唆に富んでいると考えられます。

そのことについて、今注目されている概念である、「マルチポテンシャライト」と合わせて考えてみたいと思います。

 

 

チャットモンチーの歩み

 

まず始めに、チャットモンチーの歩みを簡単に振り返ってみます。

 

チャットモンチーは、2005年にメジャーデビューしました。

当時のメンバーは、橋本絵莉子さん(Vo./Gt.)、福岡晃子さん(Ba.)、高橋久美子さん(Drs.)の3人でした。

デビューから2011年までの間に、この3人体制で多くのヒット曲を生み出すなどの精力的な活動を行いました。

しかし、2011年にドラムの高橋久美子さんが脱退します。

絵莉子さんと晃子さんの2人体制となったチャットモンチーは、ここからいくつかの「変身」を遂げながら、独自の道を歩み始めます。

 

まず2人は、サポートのドラムを入れて3人体制の音楽を維持するのではなく、2人で音を鳴らす道を選びました。

ベースだった晃子さんが、驚くべきことにドラムに転向します。

絵莉子さんがボーカルとギター、晃子さんがドラム、という演奏形態を始めとして、曲ごとに演奏する楽器を交代するというスタイルをつくりだしました。

2013年までの間に、このスタイルでシングルとアルバムの発売、全国ツアーの開催などを行いました。

 

その後、約1年間、絵莉子さんの産休で活動を休止します。

 

そして2014年、チャットモンチーは新たな演奏スタイルで活動を再開します。

キーボードとドラムのサポートメンバーを入れて4人で音を鳴らす演奏スタイルです。

サポートメンバーを男性2人、女性2人のそれぞれ2組つくり、それぞれを「男陣」、「乙女団」と名付けます。

この演奏スタイルで2016年までの間に、シングルとアルバムの発売、武道館公演、地元徳島でのフェスの開催などの活動を行いました。

このフェスの開催までの、10周年記念の一連の活動を完走し、完全燃焼して「やりきってしまった」という2人は、新たな演奏スタイルを模索し始めます。

 

そしてその年の9月から、2人はパソコンを活用したデジタル楽器とともに演奏するという新たなスタイルで活動を再スタートさせます(通称チャットモンチー・メカ)。

2枚のシングルを発表するとともに、これまでの楽曲をリアレンジするかたちで演奏するツアーを2017年に開催しました。

そして、このツアーを行うなかで、チャットモンチーを終わらせることを決めた2人は、翌年の2018年にメカスタイルに振り切ったラストアルバムを発表し、7月の武道館公演と、2回目の地元徳島でのフェス開催をもって活動を「完結」しました。

 

このように見てみると、チャットモンチーは様々に活動スタイルを変えていったことがわかります。

その道のりは、とてもユニークなものであったといえるでしょう。

 

 

マルチポテンシャライトについて

 

一方で、マルチポテンシャライトは、前のブログでも少し言及しましたが、エミリー・ワプニックさんが、同名のタイトルの書籍で紹介した概念です。

この本では、「さまざまなことに興味をもち、多くのことをクリエイティブに探求するひと」と定義されています。

この本では、マルチポテンシャライトの方の、4パターンの働き方のモデルが紹介されています。

 

・グループハグ・アプローチ

(ある一つの多面的な仕事に就いて、その中でいくつもの分野を行き来する)

 

・スラッシュ・アプローチ

(パートタイムの仕事やビジネスを掛け持ちし、精力的にその間を飛び回る)

 

アインシュタイン・アプローチ

(安定した「ほどよい仕事」をしながら、情熱を注げる取り組みをほかに持つ)

 

・フェニックス・アプローチ

(数か月、数年ごとに業界を移り、興味を一つずつ掘り下げていく)

 

の4つです。

 

私はこの概念を個人の生き方のみならず、団体の生き方(在り方)にも適用できるのではないかと考えています。

 

 

チャットモンチーとマルチポテンシャライト

では、チャットモンチーの歩みを、「マルチポテンシャライト」という概念をつかって、解釈してみたいと思います。

 

一般的な音楽活動を考えてみると、

・一定の体制のもとで、様々な音楽の要素を取り入れて、そのバンド(個人)の可能性を追求していく。それによってバンド(個人)の多様性が広がっていく。

・多様性が広がっていくなかでも、中心には、バンドのやりたい方針のような軸が存在している。

このように言い表せるのではないでしょうか。

 

これは、マルチポテンシャライトの4パターンのなかでは、グループハグ・アプローチに当てはまると考えられます。

 

チャットモンチーの活動も、これに当てはまっているといえるでしょう。

 

しかし、他のバンドや個人と違うのは、これに加えて、フェニックス・アプローチもとっている点ではないでしょうか…!

 

彼女たちは、演奏スタイルを一変させながら、数年ごとに「変身」していきました。

やってみたいことを見つけて、いくつかの演奏スタイルに数年ごとに乗り換えていったのです。

フェニックス・アプローチを取り、そのフェーズごとにグループハグ・アプローチをとっていた、と考えられます。

 

 

チャットモンチーの歩みから見えてくるもの

チャットモンチーは、メンバーが脱退したあと、従来の路線を継続していくのではなく、積極的に変わっていく道を選びました。

3人体制だけにこだわるのではなく、様々な演奏スタイルにも挑戦していくというのは、新たな分野に飛び込んでいくということであり、それによって、チャットモンチーは、新たなバンドの一面を切り開いていきました。

もちろん、誰にでもできることではないのかもしれません。

しかし、フェニックス・アプローチをとることで、バンドのもつ様々な可能性が引き出されたといえます。

チャットモンチーの歩みというのは、まったく新しい分野に飛び込むことで新しい可能性を引き出すことができるということを、身をもって示してくれているといえるのではないでしょうか。

 

私たちは変化の速い時代のなかにいて、かつ、平均寿命は長くなっています。

長い人生を生きていくなかで、その時々で、価値観も移り変わっていきます。

数年ごとのスパンで新しい分野に飛び込んでいくというのは、その時々の変化に応じて生きていくうえで、一つのヒントとなり得るのではないでしょうか。

 

最後までお読みいただいてありがとうございました。