はじめに
私は今、この世の中において、世代というものに注目すべきではないかと考えています。
世代の交代というのは、これまでも繰り返されてきました。
祖父母がいて、両親がいて、その子どもがいて、その子どもの子どもがいて…という流れは、今までもずっと存在してきました。
しかし、20世紀以降の世代の交代というのは、それ以前の時代の世代の交代とは大きく異なっています。
そのことが、今の社会の背景に存在しており、様々な場面に影響を及ぼしていると考えられます。
今の時代における世代
20世紀よりも前の時代と比較して、20世紀よりも後の時代の特徴として挙げられるのが、テクノロジーの急速な進歩などによる、世の中の急激な変化です。
例えば、1700年から1800年までの100年間の変化と、1900年から2000年までの100年間の変化を考えてみてください。
1700年の人間が1800年の世界に行っても、周りの景色はさほど変化がないように思えるでしょう。
しかし、1900年の人間が2000年の世界へ行ったら、どう思うでしょうか。
同じ場所にいるとは思えないほど、周りの景色は変化したように感じられるはずです。
例として、一つの家族のなかで、1930年代生まれ、1960年代生まれ、1990年代生まれの30年周期で次の世代が誕生しているパターンを考えてみましょう。
1930年生まれの世代といえば、幼少期はまだ戦前です。
日本が貧しく、苦しかったころを、直に知っています。
戦争も直に経験しました。
生まれたころは、ラジオが普及し始めたころで、人生の途中で、電話やテレビが普及していくのを目の当たりにしました。
1960年生まれの世代は、若いころを、良好な経済の中で過ごしました。
まだ、未来に明るい希望をもつことができていた時代です。
メディアはテレビや雑誌が中心で、携帯電話はありませんでした。
人生の途中で、携帯電話やインターネットなどのテクノロジーの発展を目の当たりにしています。
1990年生まれの世代は、好調な経済を、経験したことがありません。
前の世代がもっていたような、未来への明るい希望は、なかなかもつのが難しくなっています。
生まれたころから携帯電話やインターネットに囲まれ、それらに自然と接しています。
1990年生まれの世代から約30年後の現在に至るまでにも、携帯電話がガラケーからスマートフォンへ置き変わっていくなどの、大きな変化が起きています。
このように、一つの家族の3世代を見ると、30年周期で時代背景も価値観も大きく変わっていることがわかると思います。
一方で、今の世の中は、平均寿命がとても長くなっています。
平均寿命が短い社会であれば、次の価値観が現れる前に、前の世代の価値観をもった人々は退出していくことになります。
しかし、平均寿命が長い世の中においては、前の価値観をもった世代も、一生のなかで複数の新しい価値観の変化を経験することになります。
これらのことから、世の中の変化がとても大きくなっているのと並行して、人間の平均寿命もとても長くなっており、20世紀以降の私たちは、一生を、世の中の大きな変化の中で過ごすようになっているといえるでしょう。
今の世代の状況がもたらす社会への影響
このような時代において、各世代の間で意思疎通を図る上で、気をつけておくべきこととはどんなことでしょうか?
前の世代は前の世代のことを直に知った上で今の世代をみられるけれども、今の世代は前の世代のことを直には知ることができません。
過ぎ去った過去というのは、映像や本などで追体験することしかできません。
同じように、前の世代の若いころを、その次の世代は直に体験することはできません。
一方で、前の世代は、生きる過程で、次の世代、またその次の世代の時代も、直に体験することができます。
このように、前の時代を直に経験できないことが、前の世代と次の世代の、双方への見方を不平等なものにさせています。
さらに、今は時代の変化が早いため、他の世代との間で、共通の価値観を共有することも難しくなっています。
一つの価値観にはまってしまうと、そこから抜け出せないこともあります。
自分とは別の世代の価値観を考慮せずに、自分の世代の価値観のみに立脚してものごとを考えてしまうと、別の世代との意見の不一致が起きてしまう可能性があります。
例えば、40代、50代になって、上の立場になったとき、通常であれば、今まで培ってきた経験を活用したいところですが、次の世代はもう別の価値観になっていて、自らの経験や価値観が通用しない、という事例が考えられます。
また、これほど多様な価値観をもった人々が同居している社会においては、誰かにとってよいと思われることが他の誰かの不利益になったり、誰かの価値観に基づいて語られていることが、他の誰かの価値観にはそぐわない、ということがより起こりやすくなっていると考えられます。
このようなことが認識できていないと、生きづらさにつながるようなこともあると考えられます。
おわりに
1945年の終戦の年を境にして、価値観が大きく変わりました。
1990年代にバブルがはじけて、そのときまで当たり前と思われていたことが通用しなくなった事例がいくつもありました。
1995年や、2011年の震災の時を境にして変化した価値観もありました。
これからも、時代は刻々と変化していくでしょう。
世代間でうまく意思疎通を図っていくために、時代の変化が早いということを念頭に置き、前後の世代がどのような時代を生き、どのような価値観をもっているかを知ることが、今の時代にはより一層求められているといえるのではないでしょうか。
最後までお読みいただいてありがとうございました。